ホーチミン便り

第四回 Oct. 22, 2011                                2012/07/03掲載

さて、私が今お世話になっているFPTSoftware:ベトナムのNTTデータと言われる元国営会社から民営化したソフトウェア開発会社では今年、日本の某大手IT会社から委託を受け、今年入社の新人15名の海外研修を行っていました。Business Fundamentalのタイトルで講師は英国人、米国人でした。TOIECの点数とは一切関係なく経済成長著しい地域で海外生活を経験しながら英語でビジネスの基礎研修を受ける、と

いうものです。日本では9月頃ニュースで話題になったようです。

 昼休みに、隣にいるオッサン(私)がまさか日本人だと知らずに、自由に本音トークをしていました。「おまえ分かる?」「ぜえ~んぜん!」「英語?内容?」「両方!」「でもお前留学してたって入社の自己紹介で言ってたじゃん」「6ヵ月でこんな英語までわかるようになるハズねーじゃん」「経営者なんて狂ってるよ、自分たちがほとんどできねえくせに俺たちにこんな苦労させてさ」「自分でやってくれって言いたいよ」「でもこの後で赴任先がベトナムとかインド、アフリカのどこかになったらどうするよ?」「即辞表だろう、ヤッテラレナイヨ、外国なんてテロだらけだぞ」「日本は基本ないからイイじゃん」「でもオヤジが昔は日本でも学生がテロやってたって言ってたぜ」

…バカ、マヌケ、アホ、オタンコナス、ちがうの!それは「学生運動」というの。運動と言ってもエアロビクスとはちがうんだぞ。でも、確かに一部テロともいえるようなこともありました…

このようなことが起きている責任の一端は私にもあるかもしれません。物事をシッカリと考えたり検討することなく、儲かる、愉快、楽ちん、早い・・・・と、マアマア堅いことは言わずに・・・・・と軽佻浮薄なことばかりを追いかけてきたような気がしています。判断するのは時の流れにまかせ、ハッキリした自覚のうえでの判断をした覚えがない「決断」という言葉だけは頻繁に使ったことはウルオボエですが、あるような気がします・・・・・・

果物はいつでもいっぱい
果物はいつでもいっぱい

大手商社でさえ入社希望者の半数以上が海外赴任はしたくない・・・と言う日本!商社に入りたいという学生がですよ!昭和初期には日本政府の在外公館よりズーッと多く、世界各地に事務所ネットワークを持っていたあの商社、一時は他国にまねできない世界展開する日本式ビジネスの真骨頂といわれたあの商社。一方最近の韓国サムソンは入社時のTOEIC足切が800点!10年くらい前まで国別TOEIC平均点数が日本より下だったのに、いまや日本より下なのは「北朝鮮」だけだそうです(←ウワサです、因みにTOEFLですと北朝鮮より低いのです…これはデータにあります)また、サムソンのほうがSONYより大きい企業だ!ということを知らない人も多いのです。ついこの間はとうとうクリントンおば様が「日本はもっと米国へ留学させるべきだ、そのためのサポートを米国は惜しまない!」などとよその国から心配されてる始末です。少子化もあるのでしょうがこの14年間で日本人の米国留学生は50%も減ったそうです。品質管理の行き届いた日本で、品質管理してないのは、「教育システム」と「政治システム」だ!と某外国紙が書いていました。

一方たくさんのたくましい日本の若い人もベトナムにいました。

①日本で大手のXXXソフトの女性:

たまたま旅行で来て、気に入って当地の大学でベトナム語を習い、現地採用で約400名の現地ソフト開発会社の総務を取り仕切っていて、見よう見まねでPMみたいなこともやっています。「私ITなんか全く素人ですが、技術の問題はそれほど関係ないと思います。私でもやれてますもん」お住まいは?「XXの路地裏のアパート」通勤は?「バイクにきまってますよ、こちらでは」怖くないですか?「ハア?みんな日本から来る人はそういうけど、私ここで暮らしてるんですよ、当たり前ですよ、そんなの!」

②日系幼稚園の先生:私はアメリカの大学卒業して日本で就職しようとしたら、お呼びでないって!求人広告に「ベトナムで幼稚園の先生募集」を見つけ応募したら採用になっちゃった!」「保母資格、経験2年以上・・・こういう要件は無視で応募したけど、すこしかすってるのはアメリカで初等教育がメジャーだったのでポイントはわかるかな…」「日本人駐在員のこどもだけでなく、欧米系の子もいるからそのためかも…どっちでもイイ」「2~3年やったらこれもキャリアとしてレジュメに書けるから」「結婚もしたいから2~3年後には日本に戻りたいけどいい職がなければまたアメリカに行こうかな」「いい男紹介してくださいよ、こっちにいる一流会社の駐在員、みんな帰りたい帰りたいばかりで子供みたい、相手にならないヨー」

③日本語の先生:某大学のベトナム側協力提携校への交換留学生、その後母校からの要請でリエゾンとしてとどまり、そのほかに日本語学校の先生をしている。いわく「みんなベトナム、ベトナムっていうけれど、日本は何もしてないみたい…ODAは喜ばれてるけど実質のところは韓国と台湾にズーッと負けてると思う!」「こっちの頭のいい人もっともっと日本に行ってもらって、帰ってきたら政府の技術関係の決定に入ってもらうようにしないとダメだと思う」「先日うちの学長が来てベトナム政府を表敬訪問したあとで食事に呼ばれ、何か言いたいことは?と聞いてきたので、このことをワーッと言ったら、うなづいてはいたけど黙っちゃった!」「声が大きすぎたのかな?ハハハア!」彼女はこの日本の国立技術系大学出身者です。

 

みんなすごく逞しい!みんな女性!生活力、適応力、発想力が豊か・・・彼女らを日本社会が受け入れてくれないのではなく、彼女らが今の日本社会を頼りにしてない気がします。

清い1票をお持ちの人生の先輩、ご高齢のみなさま、ぜひこの辺の事考えてあげてください!

 

2011年11月22日@HCMC      今福民生

 

<ご参考>

「中国のエリート高校生日本滞在記」 日本僑報社   人見 豊・編著

「サイゴンから来た妻と娘」 文春文庫 近藤紘一・著

 

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